紅梅
紅梅 【こうばい】 紅色の花を咲かせる梅。
『葵屋』に梅を見に来ませんかと、別館の使用人に誘われた。料亭の庭に見事な紅梅の木があって、今が盛りなのだそうだ。ついこの間まで雪が降っていたと思っていたのに、もう紅梅の季節だなんて、時間が経つのは早いものだ。蒼紫に初めて会ったのは鮎が出回る時季だったから何だかんだ言いながら三つの季節を過ごしてしまったわけである。その割には二人の間にこれといった進展は無いのだが。
雪見の日に手を引いてもらって歩いてからもこれといって新しい変化は無い。あれから会う機会は何度かあったのだが、手を繋ぐことは無いのだ。
このまま何ともいえない関係がずっと続くのかなと不安に思う一方で、こんなぬるま湯のような曖昧さが心地良かったりして、自身もこの先どうなりたいのか分からなくなってきた。蒼紫がどう考えているのかも相変わらず分からない。このまま何の変化も無いまま、また鮎の季節を迎えてしまうのだろうか。
「もう梅の季節なのねぇ。お言葉に甘えてお邪魔しちゃおうかしら。ねえ、さん?」
ぼんやりと考えていたに、郁がはしゃいだ声で話しかける。が答える前から既に郁は乗り気のようだ。きっと、が一緒なら花見弁当でも出されると思っているのだろう。
花見弁当は兎も角、抹茶と菓子くらいは出してもらえると思う。そこには多分蒼紫も同席することになるだろう。少し前まではそういう御膳立てが重ったるく感じていたものだが、今はそうしてもらえるのが嬉しく思える。
蒼紫とお茶を飲みながら梅を見るなんて、風流で楽しそうだ。無口な男だから会話はあまり弾まないだろうが、ああいう物静かな男と紅梅という組み合わせはとても似合いそうだし、それを眺めるだけでも楽しいと思う。ただ静かに時間を過ごすというのも味があって良いと思えるようになったのは、蒼紫と知り合ってからのことだ。
ただ、静かな時間を過ごすには、郁が一寸邪魔だ。そう思うのは悪いなあと思うのだが、お喋りな彼女が一緒にいると、蒼紫と二人でぼんやりとするというのは絶対に出来ない。どうせなら二人きりで梅見をしたいものなのだが。
「そうねぇ………」
少し渋るような素振りのを横目で見て意味ありげに笑うと、郁は使用人に尋ねる。
「一人連れて来たい人がいるんですけど、良いですか?」
「良いですよ。主人にも伝えておきましょう」
「良かったぁ。ありがとうございます」
使用人に快諾されて、郁は嬉しそうに手を叩いた。そして今度はに耳打ちする。
「私は富崎さんと適当にやるから安心して」
「…………………っ!」
自分の考えを読まれたかのような郁の言葉に、は顔を赤くした。
ことある毎に言われる定番の台詞だが、今回は少し雰囲気が違う。と蒼紫を二人きりにしようと企てているというよりは、二人の邪魔をするまいとしているかのような言い方だ。
郁に二人のことを話すことは無いけれど、勘の良い彼女のことだから何となく察しているのだろう。予想していたこととはいえ、やはり身近な人間に勘付かれるのは恥ずかしい。
郁は二人がどこまで進んでいると思っているのだろう。何しろ出会ってもうすぐ一年である。ここ何ヶ月かは会う回数が増えていることも知っているし、まさか今までに二回しか手を握ったことがないなんて思ってもいないだろう。
そういえば郁と富崎はどこまでの関係なのだろう。二人で遊んだ話ははしょっちゅう聞かされているが、考えてみればそういう肝心なことは何一つ聞いたことが無い。
郁たちはそろそろ二年目になる。手を繋いで歩くのも、接吻だって当たり前のようにやっているだろう。彼女のことだから、とんとん拍子に進めたに違いない。どうしたらそう上手くやれるのか、には不思議なくらいだ。
こんなことを較べても仕方のないことだと解ってはいるが、ここまで進展がないのも考えものである。ここは一つ、郁を見習っても積極的にならなくては。
「………そうね」
二人きりで梅を見ていたら、きっといつもと違う雰囲気になれるに違いない。雰囲気が変われば、二人の間にも何かしら違うことが起こるはずだ。
素直に応えるに面食らった顔をした郁だったが、やっとそういう気になってくれたのかと嬉しそうに微笑む。の破談とほぼ同時期に富崎との付き合いを始めたせいもあって、郁はずっとの新しい恋が気になって仕方がなかったのだ。色々あったが今は上手くいっているようで、郁は自分のことのように嬉しい。
「じゃあ、若旦那さんにも宜しくお伝えくださいね」
使用人にそう言うと、郁は楽しげに笑った。
料亭の座敷から見る梅の木は、今が盛りとばかりに見事に咲いていた。数本の木が密集して植えられているものだから、まるで木が燃え上がっているようにも見えて迫力がある。
「凄いわねぇ。前に来た時はこんなのがあるなんて気付かなかったわ」
「だって、あの時は暗かったもの。それに、ゆっくり庭を見る雰囲気でもなかったし」
縁側に立ってうっとりと目を細めている郁に、は笑いながらちくりと言う。初めて『葵屋』の座敷に通された時は郁と翁がたちをくっ付けようと必死になっていて、夜の庭を楽しむという雰囲気ではなかったのだ。
その言葉に郁はぷうっと膨れてを横目で見たが、反論の言葉が思いつかなかったのか、今度は茶の用意をしている蒼紫に話しかけた。
「立派な梅ですね。古い木なんでしょう?」
「そうですね……三百年くらいでしょうか。元は一本の木だったのが、伸びた枝が地面に着いて株分けされていくうちにああなったと聞いています」
「あれ、同じ木なんですか?!」
さらりと説明されて、はびっくりした声を上げた。樹齢三百年というのも凄いが、あれが元々は一本の木だというのも凄い。勝手に殖えていくなんて、この梅の木はどれだけ生命力が強いのだろう。
世にも珍しい梅の木に郁も好奇心を刺激されたらしく、座敷に座っている富崎に駆け寄ると袖を引いて甘えた声を出した。
「ねえ、本当に根っこが繋がってるのか見に行きましょうよ」
「ああ、お茶を戴いてから見に行こうか」
穏やかに微笑んで富崎は応える。彼は梅よりも茶を点てる蒼紫の手つきの方に興味があるようだ。こういう席は初めてなのだろう。
郁はそんな富崎の様子が気に入らないようにむっとしつつも、更に甘えた声で誘いかける。
「お茶は後ででも良いわ。それとね、さんから聞いたんだけど、旅館の方の庭には大きな鯉がいるんですってよ。私、鯉に餌をあげてみたいわ」
「でも折角用意していただいてるんだから―――――」
「あら、四乃森さんだって一度に四人分のお茶を点てるのは大変よ。二人分ずつ分けた方が良いんじゃないかしら。ねえ?」
「は…はあ………」
郁の勢いに圧されたように、蒼紫は曖昧に応える。郁のような強引で活発な女はどう扱っていいのか分からないらしい。
一人で機関銃のように喋る郁の様子に、富崎もも唖然としてしまう。彼女が場を取り仕切ってしまうのは毎度のことだが、よくもまああんなにペラペラと喋って舌を噛まないものだ。そしてそれ以上に、場の空気を力技で自分の思い通りにしてしまうことに感心する。
が、郁にはそんな周囲の様子など目に入っていないのか、蒼紫の反応に満足したようににんまりと笑って、
「ほら、四乃森さんだってそう言ってるじゃない。ね、だから私たちは先にお庭を見て廻りましょ」
「はいはい。
申し訳ありませんが、この人がうるさいんで先に庭を拝見させてください」
仕方なさそうに立ち上がると、富崎は蒼紫に丁寧に頭を下げた。そうされると蒼紫も恐縮したように慌てて手を振って、
「いえいえ。どうぞごゆっくり。こちらのことは気になさらないで下さい」
「本当にねぇ、我が儘で困ったものです。四乃森さんも最初が肝心ですよ」
「富崎さん、何話してるの? 早く早くー!」
先に庭に下りた郁が手招きをしている。富崎がこっそりと話している言葉は聞こえていないはずだが何を言っているのかは解っているのか、可笑しそうに笑っている。
庭に降りた二人の様子を、蒼紫は興味深そうに眺めている。我が儘で困ると言いつつも、大人しく郁に引きずり回される富崎の姿が不思議なのかもしれない。
「郁さんったらいつもあんな感じで………。富崎さんも大変ですよね」
傍から見ると微笑ましい光景であるが、当の富崎は大変だろう。郁はいつもこの調子でやりたい放題で、彼はそれに付き従っているという様子なのだ。
蒼紫も賛同するかと思いきや、彼は口許をほころばせただけで再び作業に戻った。そして茶筅を掻き回しながら、
「富崎さんはああいう人が好きなのでしょう」
「そうですねぇ………」
には理解できないが、我が儘な女に振り回されるのが好きな男というのは確かに存在する。郁にいつも仕切られている富崎も、そういう男なのだろう。ああやって引っ張りまわされている姿は楽しそうだ。
そんな富崎が相手だから、いくも今日まで続いてのかもしれない。特に大きな喧嘩も無く二年も続いたなんて、彼女にしては驚異的なことだ。こんなに続いたのだから二人はこのまま結婚するだろうとは思っている。
郁はそうやって自分にぴったりの相手を見つけたけれど、はどうだろう。結婚の話まで出た男は結局そういう相手ではなかった。それなら蒼紫はどうだろうか。
「どうぞ」
庭を眺めながらそんなことを考えていると、蒼紫が茶碗を差し出した。
「いただきます」
茶道の作法は知らないが、見苦しくないように飲めば大丈夫だろう。は茶碗を取るとゆっくりと茶を飲んだ。
茶の湯は蒼紫の趣味らしい。寺に行ったり茶道が趣味だったり、若いくせに渋い男である。だが、あまり活動的過ぎるのも付き合う方としては疲れるから、自分にはそれくらいの男が丁度良いのかもしれないとは思う。
茶碗を置き、は再び紅梅に視線を遣った。
「本当に立派な梅ですね。三百年ですか………」
「植木屋の話では、あと百年は大丈夫だそうです」
「百年………」
蒼紫の言葉は軽いけれど、にとって百年は永遠に近い。百年後の今日もあの梅の木はこうやって花を咲かせているのかなんて、想像するのも無意味な気がする。そんなことよりも、来年の今日もこうやって蒼紫と向かい合っているのかと考えた方が現実的だ。
来年の今日、と蒼紫は一体何をしているのだろう。こうやって茶を飲みながらあの梅の木を眺めているのか、それとも何処か別の場所にいるのか。何処で何をしているにしても、傍に蒼紫がいてくれれば良いと思う。
今年はまだ四分の一しか過ぎていないのに、もう来年のことを考えているなんて。自分の気の早さには苦笑した。
人を好きになると先のことを考え過ぎるのがの悪い癖だ。まだ何も始まっていないのに先のことを勝手に求めてしまって、それが叶わないと落ち込んでしまう。求めるばかりではなく、こちらから動かなければ相手も与えてくれはしないのに。考えるべきなのは来年のことではなく、今日の今この瞬間のことなのに。
そう、二人の関係はまだ始まってもいないのだ。来年も一緒にいられる保証なんて何処にも無い。最近会う回数が増えていたから忘れかけていたが、二人の繋がりはいつ立ち消えになっても不思議ではないくらいあえかなものなのだ。だから、はっきりとさせたい。来年もこうやって二人で紅梅を見るのだという決定的なものが欲しい。
またそうやって求める、とは舌打ちしたい気分になった。そうやって求める気持ちが蒼紫にとってとても重いものかもしれないのに、どうして止めることが出来ないのだろう。否、それ以前に、“来年も蒼紫と梅を見る”ということくらい、もっと軽く考えれば良いのに。たったそれだけのことをこんな風に重大なことのように考えるなんて、どうかしている。
「どうしました?」
黙り込んでしまったの暗い表情に気付いて、蒼紫が訝しげに尋ねる。
お喋りというほどではないが、言うもなら積極的に話題を振ってくるが黙り込んでいるのは珍しいことだ。梅に見惚れているようでもなく、何か不都合でもあったのかと蒼紫は心配してしまう。
思い返してみれば、雪の日に会った時も様子が変だった。思い詰めたような顔で黙りこくっていて、殆ど話をしていなかったように思う。
の心を煩わせているのはこれから先のことだろうとは、蒼紫も察している。互いに好意を寄せていることを何となく感じているというのに決定的なことは何も無いというのは、男の蒼紫は兎も角、女のには居心地の悪いものだろう。身近に郁と富崎のような睦まじい男女がいるなら尚更だ。
最初の約束を盾に踏み込んだ関係に持ち込ませず、それでもを手放したくないと思う自分の狡さは、蒼紫も自覚している。自分のこれからの時間は彼女のためには使えない。けれど今更彼女のいない時間というのも考えられない。と過ごす時間は、蒼紫のこれまでの時間で初めて御庭番衆も御頭も意識しなくて良い気楽なものだったのだ。
初めてと二人きりで話した時、自分を利用して欲しいと言ったけれど、本当に利用していたのは蒼紫の方だった。結論を求めることが出来ないの立場を良いことに、自分にとって楽な雰囲気を作り続けてきたのだ。これでは土壇場で結婚を反故にした昔の男と変わらない。否、あの男はを自由にした分だけ、蒼紫よりはマシかもしれない。
の新しい出会いを許さず、かといって自分が新しい恋人の座に着くこともせずに中途半端に縛り付けておくなんて最低だ。今はまだ良いだろうが、彼女もいつまでも若くはない。とのこれからを考えられないのなら、もう身を引くべきだろう。蒼紫に好意を抱けるまでに回復したのならきっと、彼よりちゃんとした男と先々のことを見据えた恋をすることが出来るはずだ。
「来年の―――――」
紅梅に目を遣ったまま、はおもむろに口を開いた。
「来年の今頃も、こうやって皆でお花見が出来たら良いなあって」
本当は「四乃森さんと」と言いたかったのだが、流石にそれはあからさま過ぎて言えなかった。
何の進展も無くても、来年もこうやって二人で茶を飲みながら紅梅を見ることが出来たら、それだけで十分ではないか。こうやってただ静かに流れていく時間というのは、の性格に合っているような気がする。
自分と郁は違うと思いながら、知らず知らずのうちに恋をしたら郁たちのようにならなければいけないと思い込んでしまっていた。郁とは違うし、富崎と蒼紫だって違う。違う組み合わせなのだから、二人の間に流れる雰囲気が違っても当然だ。だから、このままでも良い。
「来年は、人が増えているかもしれませんね」
「え?」
思いがけない言葉に、は驚いて蒼紫を見た。
人が増えるというのはどういうことなのだろう。来年には郁と富崎が結婚していて子供も一緒に、という冗談なのだろうか。しかし蒼紫の表情は冗談を言っているものではない。
驚いて固まっているの顔に気付いていないように、蒼紫は静かに言葉を続ける。
「小倉さんと富崎さんと、さんと、さんの大切な人と。人が増えればきっと賑やかになるでしょう」
「えっ?!」
蒼紫の言っている意味が解らない。“さんの大切な人”がの好きな人という意味なら、それは他でもない蒼紫のことだ。人数は増えはしない。
これまで、の蒼紫に対する好意は通じていると思っていた。そして彼もまた、に好意を持ってくれいていると思っていたのに。今までのことは全部の勘違いだったとでもいうのだろうか。
「一寸待ってください、それって―――――」
訳が分からなくなって慌てて口を挟もうとするを遮り、蒼紫はこれまで見たことも無いほど真剣な面持ちで宣言した。
「もう終わりにしましょう。今は良くても、いつまでもこんなことを続けられるわけがない。さんはもう十分に回復したのだから、ちゃんとした人を探すことを考えるべきです」
「それは………」
この人は何を言っているのだろう。目の前の男が急に見ず知らずの人間になったような気分になって、は呆然となった。
確かにの心は回復しただろう。しかしそれは、相手が蒼紫だからだ。違う相手を紹介してもらったとしても、彼ほど信頼することは出来ない。否、それ以前に蒼紫以外の相手なんて、今のには考えられない。
今までずっと二人で食事をしたり出かけたりして、互いに好意を寄せていると思っていたのに、どうして突然こんなことを言い出すのか。蒼紫が自分に好意を持っていると感じていたのは、の勘違いだったとでもいうのだろうか。
そんなはずはない。が蒼紫の手紙を無視し続けていた時には理由を問い質しに家まで来たし、手袋を渡した時にも嬉しそうにしてくれて、冬の間はずっと使ってくれていたのだ。好きでもない女が相手だったら手紙の返事が無くなっても気にも留めないだろうし、貰った物を大事に使ったりはしない。何より、頻繁に食事に誘ったりなんかしないはずだ。
これまでの蒼紫は、確実にに好意を持っていた。今までの彼の様子を思い返してみても、絶対にの勘違いなどではない。それなら何故、今になってこんなことを言い出すのだろう。
「私、何か失礼なことをしましたか? 急にそんなことを言われても、そんな………」
訳が解らなくて、は泣きそうな顔になる。突然相手から拒絶されるなんて、二年前のあの時と同じだ。またあんな思いをすることになるなんて、この状況になってもまだ信じられない。
何かしら進展したいと思っていたの気持ちが重荷だったのだろうか。それならば、もう蒼紫には何も望まない。今まで通り、一緒に食事をして、時々何処かへ行くだけで良い。手を繋ぐことすら無くても、蒼紫と同じ時間を過ごすことが出来ればそれで十分だ。
うろたえるの顔を正視できなくなって、蒼紫は目を伏せた。
見捨てられたようなの顔は胸が苦しくなるが、これが一番良いのだと蒼紫は自分に言い聞かせる。心地良いからとこのまま中途半端な状態を続けていたところで、彼女にとって良いことは何も無い。むしろ徒に時間が過ぎていく分、次の出会いが難しくなっていくだけだ。
今は悲しい思いをしても、にもいつかきっと、あの時終わりにしておいて良かったと思う日が来る。何も無いうちに別れるが、傷も浅くて済むというものだ。これ以上先延ばしにしたら、互いにもっと辛くなる。
「さんは何も悪くありません。これがお互いのためなんです」
の顔を見ないまま、反論の隙を与えないほどきっぱりとした口調で蒼紫は言い切った。
お互いのため、などと言われても、には納得できない。それくらいなら、のことが厭になったと言われた方がまだ理解できるというものだ。蒼紫はを傷付けまいとしてそう言っているのかもしれないが、その言葉の方が何倍も残酷であることに気付いていないのだろうか。
のことが厭になったのなら、それでも良い。しかし何故厭になったのか、それが彼女には全く解らない。ついこの間までは、そんな素振は微塵も見せていなかったというのに。それどころか、に好意を抱いているとしか思えない様子だったのに。
蒼紫の行動も気持ちも、何もかもが解らない。突然拒絶されてしまったことも、まだ何処か他人事のように実感が湧かない。此処に座っていることさえ、まるで夢の中の出来事のようだ。
二年前のあの時と同じた、とは他人事のように思う。あんな思いは二度としない、したくないと思っていたのに、どうしてこんなことになってしまったのだろう。何がいけなかったのだろう。
解らないことだらけで頭が混乱してしまい、は呆然とするしかないのだった。
楽しく梅を見るはずが………二人の気持ちはすれ違いっぱなしです。一体いつになったらくっ付くのか。
近付いたり離れたり、韓流ドラマか昼メロかという状態ですが、これはハッピーエンドなドリームなので御安心ください。いつハッピーエンドになるのかは未定ですが(苦笑)。